3D CG & VFX 基礎

映画・CM・ゲームなどで目にする迫力ある映像は、3DモデルとVFX(視覚効果)の組み合わせによって生み出されます。 制作フローを理解することで、専門チームとの協業や外注時のコミュニケーションがスムーズになります。

3D CG & VFX

3D CGとVFXの違い

3D CGは、物体や背景をコンピュータ上でモデリングし、質感・ライティング・アニメーションを付けて描写します。 VFXは実写映像に視覚効果を加える技術全般を指し、3D CGはVFXの一部として活用されます。

  • 3D CG:キャラクター、プロダクト、背景のモデリング&レンダリング
  • VFX:合成(Compositing)、シミュレーション、マッチムーブなど
  • 共通点:ストーリーテリングを補強し、現実では難しい表現を可能にする

近年はリアルタイムレンダリング(ゲームエンジン)と従来のオフラインレンダリングを組み合わせる「バーチャルプロダクション」も増えています。早い段階で完成イメージを共有できるため、演出と制作のコミュニケーションが密になります。

制作工程(パイプライン)

大規模案件では、工程ごとに専門チームが分かれます。概要を理解しておくと、進捗管理や外注指示がしやすくなります。

  1. プリプロダクション:コンセプトアート、絵コンテ、プリビズ(仮映像)で完成イメージを共有。
  2. モデリング:キャラクターや背景をポリゴンで構築。スカルプトツールで細部を作り込む。
  3. リギング&アニメーション:骨格や制御リグを設定し、動きをつける。
  4. シェーディング&ライティング:質感(テクスチャ)とライトを調整し、リアリティを演出。
  5. レンダリング:最終画を出力。レンダーファームを使うことも。
  6. コンポジット:実写や別ショットと合成し、色調整(カラグレ)で統一感を出す。

プロジェクトによっては、撮影準備段階でプリビズをベースにカメラワークや照明計画を立て、撮影現場で即座にCGとの合成状態を確認するワークフロー(オンセットプリビズ)も活用されています。

主な担当ロール

CG/VFX制作は多彩な専門職の連携で成り立っています。役割を知ることで、誰に何を依頼すべきかが明確になります。

  • ディレクター/スーパーバイザー:表現全体の方向性と品質を管理。
  • コンセプトアーティスト:世界観やキャラクターデザインをビジュアルで提示。
  • モデラー・リガー:3Dモデルと骨格を構築し、動きを付けられる状態に整える。
  • アニメーター:演技やカメラワークを付け、シーンに生命を吹き込む。
  • FXアーティスト:爆発・煙・流体など物理シミュレーションを担当。
  • コンポジター:レンダー結果と実写素材を合成し、最終画を仕上げる。
  • テクニカルディレクター(TD):パイプライン自動化やツール開発、トラブルシューティングを担当。

代表的なツール

用途に応じて得意分野が異なります。目的に合わせて選定しましょう。

  • Maya / 3ds Max:スタジオで広く使われる総合3Dソフト。アニメーションに強い。
  • Blender:オープンソースで導入しやすく、3D CGと簡易VFXに対応。
  • Houdini:パーティクルや破壊などのシミュレーションに特化。
  • Substance 3D:質感作成の標準ツール。PBR(物理ベースレンダリング)に対応。
  • Nuke / After Effects:コンポジットとVFX演出で活躍。

大規模案件では、ShotGridやftrackなどのプロジェクト管理ツールを使ってショット単位でステータスを管理します。レンダーファーム(Deadline、RenderMan)を利用し、夜間に大量のレンダリングを並列で処理することも一般的です。

プロジェクトで押さえておきたいポイント

制作をスムーズに進めるには、以下の3点を共通認識として持つことが重要です。

  1. 仕様管理:解像度・フレームレート・色空間などの技術仕様を事前に確定する。
  2. アセット共有:モデリングデータやテクスチャはバージョン管理ツールで一元化する。
  3. レビュー体制:ステージごとにレビューを設定し、手戻りを減らす。

また、スケジュールとリソース配分を可視化し、ピーク時にはレンダリングやシミュレーションを外部ベンダーに委託する判断も必要です。契約形態(ギャランティ/出来高)やセキュリティ要件も早めに整理しておきましょう。

納品と品質チェック

最終納品前には、技術要件と表現クオリティの両面で検証します。

  • 技術チェック:解像度・フレームレート・カラースペース(Rec.709、ACESなど)が仕様どおりか。
  • クオリティチェック:画面内の抜け・貼り合わせの違和感・ノイズの有無を確認。
  • データ整理:シーンデータ、テクスチャ、レンダリング設定をアーカイブし、再利用できる状態で保存。

納品後の修正依頼や追加カットに備え、バージョン管理とバックアップ体制を整えておくことが重要です。