情報セキュリティの基本
企業の資産である情報を守ることは、全社員の責務です。 身近な脅威を知り、正しい対策を身につけましょう。
主なセキュリティリスク
フィッシング詐欺
実在する企業(銀行や配送業者など)を装ったメールを送りつけ、 偽のサイトに誘導してIDやパスワードを盗み出す手口です。 「至急確認してください」「アカウントが停止されます」といった不安を煽る文言が特徴です。
マルウェア(ウイルス)
悪意のあるソフトウェアの総称です。 添付ファイルを開いたり、怪しいサイトにアクセスすることで感染し、 情報の流出やデータの破壊を引き起こします。
ランサムウェア
システムやファイルを暗号化し、解除のために身代金(ランサム)を要求する攻撃です。バックアップ体制が弱い組織ほど影響が甚大になります。メール添付や脆弱なVPN経由で侵入するケースが多いため、ネットワーク全体での防御が不可欠です。
ソーシャルエンジニアリング
技術的な攻撃ではなく、人の心理的な隙を突いて情報を盗み出す手法です。電話でIT部門を装ったり、名刺交換後に信頼させて機密を聞き出すなど、コミュニケーションを利用する点が特徴です。
セキュリティ3要素(CIA)
- 機密性(Confidentiality):権限のない人に情報を見せない。
- 完全性(Integrity):情報が改ざんされていない状態を保つ。
- 可用性(Availability):必要なときに情報にアクセスできる状態を維持。
リスクへの対策は、どの要素を守りたいかを明確にするところから始まります。
私たちができる対策
🛡️ 基本の3原則
- ソフトウェアを最新に保つ: OSやブラウザのアップデートは必ず行いましょう。脆弱性を塞ぐ最も効果的な手段です。
- 強力なパスワードを使う: 「推測されにくい長く複雑なパスワード」を設定し、使い回しを避けます。パスワードマネージャーの利用を推奨します。
- 多要素認証(MFA)を有効にする: パスワードだけでなく、スマホアプリやSMSによる認証を組み合わせることで、不正アクセスを強力に防ぎます。
怪しいと思ったら
メールのリンクを安易にクリックしないこと。 少しでも違和感があれば、情シス部門に相談するか、正規のルート(ブックマークや検索)からサイトにアクセスして確認しましょう。
物理的なセキュリティも重要
- デスクを離れる際はPCをロックし、紙資料は施錠できる場所に保管する。
- 会議室や公共スペースでは、覗き見防止フィルターやイヤホンを利用する。
- USBメモリなどの外部デバイスは暗号化し、持ち出しルールを守る。
組織で守るセキュリティガバナンス
セキュリティは個人の努力だけでなく、組織全体の仕組みづくりが不可欠です。国際規格やフレームワークを活用して、統一されたルールを整備します。
- ポリシー・標準・手順:何を守るか(ポリシー)、具体的にどうするか(標準)、日々どう運用するか(手順)を文書化。
- NIST CSF / ISO 27001:リスク評価と改善サイクルを体系化するための代表的なフレームワーク。
- 教育と演習:年次のeラーニングだけでなく、フィッシング訓練やBCP訓練を通じて意識を定着。
インシデント対応の流れ
いざというときに慌てないよう、インシデント対応手順をあらかじめ理解しておきましょう。
- 検知:アラート・ログ・ユーザー報告などから兆候を把握。
- 分析:影響範囲と原因を特定。必要に応じて隔離(ネットワーク遮断)を実施。
- 封じ込め・根絶:マルウェアの除去、脆弱性の修正、パスワード変更などの対策を実施。
- 復旧:正常な状態に戻し、再発防止策と再発防止計画を整理。
- 振り返り:対応内容と教訓をレポート化し、ポリシーや教育に反映。
連絡体制を整えておく
連絡先リスト(情シス、CSIRT、外部ベンダー、経営層)を常に最新化し、役割分担と判断フローを明確にしておきましょう。休日・夜間の対応窓口も決めておくと安心です。
技術的な防御策
社内インフラでは多層防御(Defense in Depth)の考え方で、複数の防御策を組み合わせます。
- エンドポイント保護:ウイルス対策ソフト、EDR(Endpoint Detection and Response)。
- ネットワーク防御:ファイアウォール、IDS/IPS、Webフィルタリング。
- ID管理:シングルサインオン(SSO)、条件付きアクセス、特権ID管理。
- ログ監視:SIEMでログを集約し、異常を早期に検知。
これらのツールは導入して終わりではなく、運用とチューニングが成功の鍵です。アラートの閾値や対応フローを定期的に見直しましょう。