UIとUXの違いと関係性
「使いやすい」「心地よい」と感じるサービスには理由があります。 ユーザー視点での設計思考を学びましょう。
UIとUXの違い
UI (User Interface)
ユーザーとの接点。
画面のデザイン、ボタンの配置、文字の大きさ、配色など、ユーザーが直接触れる部分のことです。
UX (User Experience)
ユーザー体験。
サービスを通じてユーザーが得られる体験全体のこと。「使いやすい」「楽しい」「問題が解決できた」といった感情や価値を含みます。
綺麗なUIでも、使いにくければUXは悪くなります。 逆に、UX(目的達成)のために、最適なUIを設計する必要があります。
ユーザビリティ(使いやすさ)
良いUI/UXの基本は「ユーザビリティ」です。 以下の点に気をつけましょう。
- 一貫性: 同じ機能は同じ見た目にする(戻るボタンは常に左上など)。
- フィードバック: 操作に対して反応を返す(ボタンを押したら色が沈む、読み込み中はぐるぐるを表示するなど)。
- アフォーダンス: どう操作すればいいか直感的にわかるようにする(押せそうなボタンは立体的にするなど)。
5つのユーザビリティ指標(ISO9241-11)
有効性・効率・満足度・学習容易性・エラー発生率を指標化すると、定性的な評価だけでなく定量的な改善も行いやすくなります。
UXリサーチの進め方
UXはユーザー理解から始まります。リサーチ結果は意思決定の根拠となり、チームの共通言語を作ります。
- ヒアリング:ユーザーやステークホルダーに課題・期待・現状フローを聞く。
- 観察:実際の利用場面を観察し、隠れた問題や工夫を発見する。
- アンケート:広く定量的な傾向を把握。NPSやCSATで満足度を測る。
- ログ分析:アクセス解析や操作履歴を分析し、離脱ポイントや人気機能を特定。
得られたインサイトは、ペルソナ(代表的なユーザー像)やカスタマージャーニーマップに落とし込み、チーム全員で共有します。
UX設計のプロセス
代表的なプロセスは「発見 → 定義 → アイデア → プロトタイプ → テスト」。デザイン思考やダブルダイヤモンドのフレームワークに沿って進めると整理しやすくなります。
- 課題発見:リサーチからユーザー課題を抽出し、課題文として明文化。
- 解決策のアイデア出し:ブレインストーミングやCrazy 8sで多様な案を出す。
- プロトタイプ作成:FigmaやCanvaでモックアップを作り、早期に見える化。
- ユーザーテスト:簡易なテストでも効果は大きい。タスクを与えて観察し、気付きをメモ。
- 改善:テストで得た知見を踏まえ、UI・仕様を更新。必要なら再テスト。
プロトタイプの粒度を選ぶ
アイデア初期は紙スケッチで十分。仕様確定前はハイフィデリティ(精密な)プロトタイプで動きや文言を確認します。目的に応じて粒度を使い分けましょう。
改善効果を測る指標
UX改善は成果を可視化することで社内の合意と投資を得やすくなります。以下の指標を活用しましょう。
- コンバージョン率:フォーム送信、申込み、資料ダウンロードなどの達成率。
- タスク完了時間・成功率:ユーザーテストで測定し、操作の容易さを定量化。
- チャーン率・継続率:サービス継続利用を追跡し、UX改善の影響を測定。
- 定性フィードバック:ユーザーコメント、サポート問い合わせ内容をカテゴリ別に整理。
アクセシビリティとインクルーシブデザイン
誰にとっても使いやすい体験を提供することが、結果的に全体のUX向上につながります。
- キーボード操作:すべての機能をキーボードで操作できるか確認。
- スクリーンリーダー:ARIA属性や代替テキストを設定し、読み上げに対応。
- 色覚バリアフリー:色だけに意味を持たせず、テキストやアイコンで補完。
- 文章の読みやすさ:難解な専門用語を避け、平易な言葉を選ぶ。
WCAG(Web Content Accessibility Guidelines)のレベルAAを目標に整備すると、企業サイトとして十分な水準になります。